手帳の起源

 今月は手帳の歴史について、あれこれ述べてきたが、直感的に言うと、手帳の語源は英語のハンドブックもしくはマニュアルの直訳ではなかろうかと思う。というのは戦前の手帳の様子を見ると、これは本人が記入するノートやダイアリーではなくて、所属する組織によって支給される、所有者が最低限知っておくべき事項をまとめた入門書(handbook)もしくは手順書(manual)であるからだ。同時に、本人の経歴が記入され、本人が持ち歩いて提示することによって、管理運営の便宜を計る記録帳でもある。
 代表的な例が、軍隊手牒や母子健康手帳である。軍隊手牒でいえば、その軍人勅諭などの内容は丸暗記を要求され、記入されていた本人の経歴は所属替え等の際には貴重な情報になったたろう。
 情報網が未発達な時代では、アナログな手帳は組織管理の重要な手段であったのである。
 言葉としての「手帳」の起源はこの携帯用文書集「Handbook」あたりに有るのではないかと思う。

 同時に、懐中日記やポケットノートといった小冊子も、これに習ってサイズ的な意味で手帳と呼ばれるようになったのではないか。裏付けはないので、あくまでも直感と言うところではある。(^^ゞ

 宮沢賢治の「雨ニモマケズ」は彼の死後、遺品の手帳の中から発見された。明治から大正・昭和にかけて、多くの人が手帳に記録を残している。ドナルド・キーンの「百代の過客」によれば、彼の軍隊での仕事は日本軍の兵士が残した日記を解読して、日本軍から見た戦況を分析することであった。アメリカ軍は防衛上軍人の日記を禁止していたが、日本軍は禁止していなかったのである。

 しかし、この時点では手帳という物はノートのサイズであって、現在を記録する物であったのだと思う。はたして、手帳に先々の日付が記入され。先々の頁に予定を書くことが手帳の主流に代わったのはいつ頃からなのであろうか。必要性から考えるとホテルや鉄道など予約を取るところでは、当然ブッキングという作業があるので、このような所から始まっているのかも知れない。

 しかし、とにかく戦後すぐの時期には、手帳を使ったスケジュール管理を目的として、能率手帳が時間軸まで入った手帳を製造しているのである。いつしか手帳は個人の予定を書く物となり、日記とは違う物になってきたのである。

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